【急がない人たち。──その穏やかな時間が好きでもある】

「今日は、50分にしてみようかな。」
14時半過ぎ。
ひとりの若い男性客が店にやって来た。
ただ、その日は少し混み合っていて、案内まで60分ほど待ち時間があった。
「すみません🙏 今、結構お待たせしちゃいそうで」
そう伝えると、男性はスマホを見て、やや考えてから、穏やかに頷いた。
『大丈夫です👌 今日は50分コースにしてみようかなって』
「では、お時間になったら。」
一度、外出される後ろ姿を見送る。
昔だったら、そのまま帰ってしまう人も多かった。
けど最近は、“急がない人”がだんだんと増えてきた気がする。
「若干早く、戻ってきた。」
案内予定より15分ほど早く、男性が戻ってくる。
『大丈夫ですよ〜。本を読みながら待ってますので📖』
そう言って、待合室のソファへ腰掛けた。
「水か、麦茶か。」
「水か麦茶でよければ、どちらか飲みますか?」
『えーっと…、麦茶でお願いします!』
紙コップに注いだ麦茶を置くと、小さく会釈を返してくれた。
「大変、お待たせしました。」
時間になり、部屋へ案内する。
「お待たせしました🙏 リラックスしてお愉しみください〜」
『ありがとうございます☺️』
そう言って、照れつつ部屋へと入っていった。
「最近、増えた気がする。」
⸻昔は、短い時間でサッと遊んでいく人が多数派だった。
もちろん、それも小規模で部屋数に限りのあるお店からしたら、とても助かる。
週末や祝日なんかは特に。
でも平日やキャストさんが複数人の日は、いつもより長めのコースを選びながら、ゆっくり過ごしていく人が増えた気がする。
その穏やかな時間が好きでもある。
「何を話しているかは、聞こえないが。」
30分ほど過ぎた頃だった。
部屋の方から、ふと笑い声が聞こえてくる。
何を話しているかは当然に聞こえないが。
その後もしばらく、タイマーが鳴るまで、穏やかな笑い声が続いていた。
「今日も一日、お疲れさまでした。」
50分後。
部屋から出てきた男性を見送る。
「ありがとうございました😊 今日も一日、お疲れさまでした」
すると男性も、微笑みながら返してくれた。
『ありがとうございます。こちらこそ、お疲れさまでした😌』
「ああして、成熟していく。」
以前は、“自分のための30分”で精一杯だった人も。
いつしか、“他者のための十分”を足せるようになっていく。
急がない人は、相手も急がせない。
急かさない人は、周りを安心させてくれる。
ああして人は、じっくりと“善い大人”になっていくのかな。
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